近世以降は、ルネサンスにはじまり、バーバリストの活躍や、香料産業が発展するなど様々な動きがあった時代です。

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ルネサンス

ルネサンスは、衰退したヨーロッパの復興を目指すため、14世紀にイタリアで始まった文化運動です。アラビアで受け継がれたギリシャ、ローマの文化の復興を目指しました。
中国から、火薬、羅針盤、活版印刷(活字を使って行う印刷)などが、ルネサンス期のヨーロッパに伝わりました。ルネサンス期には香料への関心が高まり、薬用植物の研究も進みました。

大航海時代

中世ヨーロッパでは、料理に香辛料がたくさん使用されるなど、香辛料は生活には欠かせないものでした。ヨーロッパでは、香料や香辛料の直接の取引が望まれるようになったことと、羅針盤が改良され遠洋航海が可能になったことにより、大航海時代がはじまりました。
ヨーロッパからアフリカ大陸に行くルートが確立し、アメリカ大陸も発見されました。アメリカ大陸からは、トマトやジャガイモ、バニラ、チリ、カカオなどの新しい植物が持ち込まれました。

バーバリストの活躍

活版印刷の普及により、薬用植物の書物が出版されるようになり、薬用植物に関係する情報が広がりました。これにより、バーバリストと呼ばれる人たちの活躍がはじまりました。イギリスはもっとも盛んだったといわれています。

ジョン パーキンソン

ジョン・パーキンソンはイギリスの偉大な薬剤師であり、植物学者、博物学者、造園家であります。代表的な著書は、園芸書として「日のあたる楽園・地上の楽園」、本草書として「Theatrum Botanicum (広範囲の本草学書)」という2つが知られています。

ジョン ジェラード

ジョン・ジェラードは、イギリスの床屋外科であり、植物学者です。趣味で庭園をつくり、植物の研究をしていたといわれています。
ジョン ジェラード著の「The Herball or Generall Hiftorie of Plantes(本草書 または 一般の植物 誌)」は広く普及しました。
後に、トーマス ジョンソンが内容を大幅に改訂し、その後も長く利用されました。

ニコラス カルペッパー

当時はラテン語で書かれた医学書が多く、一般人が読むのはなかなか困難でした。
ニコラス・カルペッパーは、ラテン語を英語に訳し、「The English Physitian(英語で書かれた療法)」を出版しました。一般向けに書かれたものになり、庶民に支持されました。ニコラス カルペッパーは、薬草と占星術を結び付けました。

カール フォン リンネ

スウェーデンの生物学者であるカール・フォン リンネは、「二名法」を定めました。二名法とは、植物の学名を、属名と種小名とに組み合わせて表記する方法です。

プラントハンター

大航海時代には、航海に植物学者が同行し、植物や鉱物などを持ち帰り本国に紹介しました。このように、航海に同行した植物学者のことをプラントハンターといいます。
ジョセフ・バンクスは、海洋探検家のジェームズ・クック(通称:キャプテンクック)のエデンバー号に同行し、ユーカリー、ミモザ、アカシアなどを紹介しました。
エデンバー号は、18世紀にオーストラリア大陸に上陸し、世界を一周しイギリスに戻りました。

香料が産業へと発展

アラビアに引き継がれた香り文化は、十字軍の遠征によって、ヨーロッパに持ち込まれます。ヨーロッパでは16世紀ごろから植物は、芳香蒸留水や香油などで利用されるようになりました。
ルイ14世紀の時代には、調香師を雇い香水をつくらせました。当時の香水は、とても貴重なものでした。
また化粧品や香水には、それを使用した人物の名前をつけることもありました。例をあげると「ネロリ」や「ハンガリーウォーター」などがあります。

ケルンの水

17世紀になると、イタリア人のジョヴァンニ・パオロ・フェミニスは、イタリアで流行していた芳香水をドイツのケルンで売り出しました。
この芳香水は「アクアミラビリス(すばらしい水)」と呼ばれていました。これが製造地にちなみ、ケルンの水と呼ばれるようになりました。
ケルンの水はヨーロッパで流行し、のちにフランス語で「オー・デ・コロン」と呼ばれるようになりました。
その後、甥であるジョヴァンニ・マリア・ファリーナに、その製造は引き継がれました。ケルンを占領したナポレオンもケルンの水を愛用したといわれています。

香水の都 グラース

十字軍の遠征により、イスラム兵の香りつき手袋がヨーロッパの社交界で流行しました。南フランスのグラース地方では、革産業が盛んでありました。革手袋が上流階級の婦人に流行し、グラース地方で生産される革手袋にも、香りがつけられるようになりました。
その後、革産業は衰退しますが、グラース地方は気候が温暖なため、香料産業に適していました。こうしてグラースは「香水の都」となりました。

近代科学の発展

19世紀に入ると、科学の発展にともない薬用植物から有効成分が、分離抽出されるようになりました。また、科学的な技術の発展をもとに、鉱物から合成できるようになりました。
20世紀になると、抗生物質が誕生しました。また、石油化学工業が発展し、石油から化学製品がつくられるようになりました。

まとめ

近世から近代にかけて、香りの歴史について見ていきました。石油化学工業の発展により、現代医学の薬の基礎がつくられていきました。薬用植物は医療での使用から、香料としての使用に変化していきました。

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