精油は自身が ”今” いい香りと感じるものが、必要としている香りであるといわれています。
その通りですが、おおまかでいいので精油の化学を知っていると、精油を選ぶときに役立つと思います。ぜひ確認してみましょう!
Contents
精油の化学の基礎
芳香分子
精油は芳香分子の集合体です。芳香分子は「原子」で構成されています。精油を構成する原子は主に、「炭素(C)」「水素(H)」「酸素(O)」の3つから出来ています。
精油に含まれる多くの芳香分子は次の2つにあります。
- 炭素と水素(炭化水素)
- 炭化水素に酸素が結合(有機化合物)
原子は結合手を持ち、他の原子と結合して、様々な芳香分子を作り出しています。
芳香分子は基本となる 3つの構造 + 官能基 と呼ばれる特定の原子団との組み合わせによって、おおまかに分類されています。
3つの構造は以下になります。
- テルペン系化合物
- 芳香族化合物
- 脂肪酸化合物
この3つが骨格となります。
官能基とは・・・芳香分子では3つの構造の骨格に官能基が付くと、ひとつの分子になります。ただし、官能基が付かない分子もたくさんあります。
芳香分子は様々な種類があり、芳香成分類として分類されています。
芳香成分類
芳香分子の構造(骨格)と官能基の組み合わせにより区分されたものを芳香成分類といいます。
芳香成分類は以下に分類されます。主な作用も見ていきましょう。
モノテルペン炭化水素類
うっ滞除去作用・抗炎症作用・コーチゾン作用・抗ウイルス作用・抗菌作用
※特徴・・・酸化しやすい。
【代表的な精油】
オレンジスイート・サイプレス・ジュニパー・ティートゥリー・ブラックスプルース・
フランキンセンス・ヘリクリサム(イモーテル)・ベルガモット・レモン・
ローズマリーカンファー
セスキテルペン炭化水素類
( -と+ の作用があります)
(-の作用) 鎮静作用・抗炎症作用
(+の作用) 強壮作用・刺激作用
※特徴・・・香りが強い。含有成分により作用が異なります。
【代表的な精油】
(-の作用):イランイラン・カモマイルジャーマン・パチュリー
(+の作用):イランイラン・パチュリー・ミルラ
炭化水素類
香りや薬理作用はありません。ローズに特徴的に含まれる成分になります。低温時(13℃以下)になるとローズ精油が固まったようになる(結晶化する)原因物質です。
モノテルペンアルコール類
抗菌作用・抗ウイルス作用・抗真菌作用・免疫調整作用・神経強壮作用・抗寄生虫作用
※特徴・・・ゲラニオールは皮膚弾力回復作用があるため、スキンケアに向いています。
【代表的な精油】
ゼラニウム・ティートゥリー・パルマローザ・ペパーミント・ホーウッド・マジョラム・
ラベンダーアングスティフォリア・ラベンダースピカ・ローズ
セスキテルペンアルコール類
ホルモン様作用(主にエストロゲン様)・うっ血除去作用・強壮作用・刺激作用
※特徴・・・エストロゲン様作用があるため、ホルモン依存型癌疾患、乳腺症などには使用しない。すべてのセスキテルペンアルコール類の芳香分子に、エストロゲン様作用があるわけではありません。
ただし、すべてが解明されているわけではないため、安全性を考慮してホルモン様作用があると記載しています。
ジテルペンアルコール類
ホルモン様作用(主にエストロゲン様)・強壮作用・刺激作用
※特徴・・・セスキテルペンアルコール類と同じです。
【代表的な精油】
ジャスミン
エステル類
鎮痙攣作用・神経バランス回復作用・鎮静作用・鎮痛作用・抗炎症作用・血圧降下作用
※特徴・・・神経系への鎮静作用が優れています。
【代表的な精油】
イランイラン・ウインターグリーン・カモマイルローマン・クラリセージ・ジャスミン・
プチグレン・ヘリクリサム(イモーテル)・ベルガモット・
ラベンダーアングスティフォリア
ケトン類
粘膜溶解作用・脂肪溶解作用・胆汁分泌促進作用・去痰作用・瘢痕形成作用
※特徴・・・神経毒性があるため、妊娠中、授乳中、乳幼児、高齢者、てんかん患者には使用しない。
【代表的な精油】
ペパーミント・ローズマリーカンファー
フェノール類
抗寄生虫作用・抗菌作用・抗ウイルス作用・抗真菌作用・強壮作用・刺激作用・免疫刺激作用・加湿作用
※皮膚刺激があるため、低濃度で使用する。広範囲には使用しない。
フェノールメチルエーテル類
鎮痙攣作用・鎮痛作用・抗炎症作用・抗真菌作用・抗ウイルス作用・抗菌作用
※皮膚刺激があるため低濃度で使用する。広範囲には使用しない。
【代表的な精油】
バジル
テルペン系アルデヒド類
抗炎症作用・鎮痛作用・結石溶解作用・鎮静作用・消化促進作用・血圧降下作用・抗真菌作用・抗ウイルス作用・抗菌作用
※皮膚刺激があるため低濃度で使用する。長期間での使用はしない。
【代表的な精油】
ユーカリシトリオドラ(ユーカリレモン)・リトセア・レモングラス
芳香族アルデヒド類
抗菌作用・抗ウイルス作用・抗真菌作用・抗寄生虫作用・免疫刺激作用・神経強壮作用・発酵抑制作用
※妊娠中、授乳中、乳幼児には使用しない。皮膚刺激があるため低濃度で使用する。長期間での使用はしない。
【代表的な精油】
シナモンカッシア
酸化物類(オキサイド類)
去痰作用・抗カタル作用・抗ウイルス作用・免疫調整作用・抗菌作用・抗寄生虫作用
※1.8シネオールは、呼吸器疾患に良いとされています。
【代表的な精油】
カモマイルジャーマン・ユーカリラディアタ・ラヴィンツァラ・ラベンダースピカ・
ローズマリーカンファー・ローズマリーシネオール・ローレル
ラクトン類
粘液溶解作用・脂肪溶解作用・瘢痕形成作用・抗ウイルス作用
※フロクマリン類には光感作(光毒性)があるため、皮膚に塗布後5~6時間は、紫外線に当たらないように注意する。柑橘系の精油に多い。
カルボン酸類
抗炎症作用
電子座標系グラフ
精油の芳香成分を視覚的に理解するために、便利な電子座標系グラフがあります。精油を選ぶ際に役立ちますよ~。
左軸の「親水性」とは、水に溶けやすい性質を持ちます。
右軸の「疎水性」とは、水に溶けにくい性質を持ちます。
ローズオットーを例にして見ていきましょう。
ローズオットーは、主に「モノテルペンアルコール類・フェノールメチルエーテル類・エステル類」から成り立っています。
モノテルペンアルコール類は、座標では左側の下にあるため、強壮作用や抗菌作用があるのでは・・・と目安がつきます。
フェノールメチルエーテル類は、座標では中央の下にあるため、同じく強壮作用や抗菌作用があるのでは・・・と目安がつきます。
エステル類は、座標では右上にあるため、鎮静作用があるのでは・・・と目安がつきます。
おおまかではありますが、精油を選ぶときに参考になるかと思います。
まとめ
精油の化学はとっつきにくく、なかなか難しいと思います。
トリートメントオイルを選ぶ時や、化粧水などのアロマクラフトを作成する場合に、精油の化学をおおまかにでも理解しておくと便利ですよ~。
アロマの化学はこちらから
精油の成分について、とても分かりやすく書かれています。
もっと精油の芳香分子について、知りたい方におすすめします!
著者は、ナード・アロマテラピー協会認定アロマトレーナー、アロマセラピストトレーナーである「川口三枝子」さんです。